スタイルチェンジ #7

 

「ど、どうした?  早くこいよ」

「うっ、うん。失礼しまーす……」


   二人がいる居間には先ほどまで無かった布団が敷かれている。風太郎は左腕を伸ばして布団に寝転がりながら一花の方を向き、彼女に来るように促す。

   年頃の男女が、恋人の家で、同じ布団で、時間を共にするということ。親密な関係でなければ、できない行為。一花は緊張しているのか、ゆっくりと風太郎の大きなそれへ、身体を近づけた。そして、そのまま───風太郎の左腕に、頭を乗せた。

 

 

 


   いわゆる、ただの腕枕である。

 

 

 


「どうだ?  初めてだから、寝心地いいかわからないが……」

「ううん……すっごい、安心する……♡」

「そ、そうか。……ならもっとこっち来いよ」

「えっ……きゃあっ!」


   風太郎は勇気を振り絞り、空いている右腕で一花を抱き寄せる。ハグに勝るとも劣らない、ゼロ距離といっていいレベルの密着度である。


「フータロー君、大胆だね……♡」

「お、お前に甘えてもらうためだからな。これくらい余裕だ」


   自分らしくないのは風太郎も承知だが、そんな自分を見せる相手は風太郎が自らキスをした一花なのだ。キスよりハードルの低いハグも初期に経験済みな仲である。粘膜接触と比較したら、これくらいなら、まだ───


「うふふっ、幸せだなー……この気持ち、フータロー君にもおすそ分けしないとだよね♪」


   全然大丈夫ではない。一花の行動に、風太郎はあっさりと心を乱される。


「ほ、頬をさするな。くすぐったい」

「えー……お触り、ダメなの?これくらい、私とフータロー君の仲なら当然のスキンシップだよ。フータロー君もよかったら私の身体、触って、甘えていいんだからね?」

「……うるせーな、大人しく甘えてろっての。俺が一花に甘えるのはまた次の機会だ。まぁ、お前が俺に触るのは、構わないが……ほどほどにしてくれ」

「はーい……♡」


   宣言通り容赦はない。一花は引き続き風太郎の頬に柔らかい手で触れてくる。とろけそうな表情で甘えてくる一花に、愛おしさとドキドキを感じる。

   そのまましばらく頬をなすがままにされていたが、満足したのか一花は風太郎の胸へと手を移動させ、制服の上から胸元を指で優しくなぞる。


「っ……」

「……ふふっ♡」


   落ち着かない。むずがゆい。風太郎の狙い通り一花は幸せそうな笑みを浮かべ甘えてくれているが、自分も結局緊張を感じてしまっている。そして、最後は───


「えいっ♡」

「!」

「やったー、恋人繋ぎだー♡  フータロー君の手、おっきいね……♡」


   風太郎の手持ち無沙汰の右手に、一花は自分の左手の指を絡ませてきた。ゴツゴツした男の手とは違う、一花の柔らかい手。普通の恋人なら段階的にはキスより前に済ませているであろうそれに、風太郎は今更ながらドキドキしてしまう。


「うーん、満足したー!  ありがとねっ♪」

「……どういたしまして」


   一花の手は離れるも、風太郎へのその熱い眼差しが止むことはない。彼女は引き続きとろけてしまいそうな甘い声で、愛しい彼氏の名前を呼ぶ。


「フータロー君♡」

「なんだよ、一花」

「フータロー君っ♡」

「だからなんだよ。目の前にちゃんといるだろ」

「えへへー♪  あのね、こんなにも人に寄り添える優しさを持ってて、それでいて頭も良くてカッコいい男の子が私の彼氏なんだーって考えてたら、すっごい嬉しくなっちゃって♡」

「買いかぶり過ぎだ。……俺も、一花にそう言ってもらえて、嬉しいけどよ」


   ボデイタッチから攻め方を変えて、言葉で愛を伝えてくる一花。もう怯むことこそなくとも、風太郎は照れ臭さを感じてしまう。それでも、一花の目を見てストレートを投げ返すことができるようになっているのは、風太郎の成長を表している。だが、朝から全力投球を続けているというのに、一花のスタミナは一向に切れる気配はない。


「私にとってフータロー君は、宇宙一ステキでカッコいい男の子なんだよっ♡  君と比較したらどんなイケメンだって私には霞んで見えちゃうくらい、大好きなんだから!」

「そ、そうかよ。俺も、美人の現役女優が彼女だなんて、鼻が高いわ。……改めて言葉にするとホントすげーことだな」

「えっへん!  全国三位の学力を誇る秀才のフータロー君と、女優の私……旭高校を代表する、すっごいお似合いのビックカップルってことだよねっ♡」

「っ……言うじゃねぇか……」


   言葉こそ似つかわしくないが、素直&デレデレな一花というのはまさしく鬼に金棒という表現がふさわしい。風太郎は思わず口角が釣り上がるのを自覚し、咄嗟に口元を手で抑える。最後の発言は控えめに言って致命傷だ。ニヤついているのは見抜かれているだろうが、指摘されるのは恥ずかしい。それでも、嬉しいという感情は完全に容量オーバーだ。満面の笑みで好意を伝えてくれる一花に、風太郎も夢中になっている。


(……恥ずかしいけど、素直に幸せだ)


   一花とのイチャイチャタイムを価値あるものと思っている今の自分に、風太郎は驚かずにはいられない。もはや完全に恋愛脳だ。こんな調子で翌日以降も普段通りに家庭教師をこなせるのか、風太郎は不安になる。優先順位ができてしまったにも関わらず家庭教師を継続する以上、他の生徒をぞんざいに扱うわけにもいかない。ポーカーフェイスのコツを一花に教えてもらう必要がありそうである。

   しかし、今日はこれからどうしたものか。そんな疑問から風太郎が時計を見ると、すでに時刻は17時に差し掛かろうとしている。このままのんびりしているのもいいのだが、何事もなければらいははとっくに帰ってきてもおかしくない時間帯だ。風太郎は仮にこのタイミングでらいはが帰ってきた場合、一花との関係は口止めしなくてはなと考えていたところ、一花が風太郎の制服の袖を引っ張り、話しかけてきた。


「ねぇねぇ、フータロー君」

「どうしたよ。まだ呼び足りないのか」

「私たち今、すっごく良い雰囲気だよね」

「自分で言うなよ。否定はしねーけど」

「大好きな彼氏の家で、布団の上で恋人同士、愛を語り合う……こんな最高のシチュエーションのメインディッシュとして、最後にヤることは決まってるよね」

「…………」

「ずっと密着してたせいかな、なんだか、身体が火照ってきちゃって……私、このままフータロー君と、シてみたいな……♡」

「……………………」


   妖艶さの混じり入るうっとりとした瞳で風太郎を見つめる一花。冷や汗が流れるのを感じる。確かに雰囲気的にそういう流れだと風太郎ですら思う。なぜ腕枕を提案してしまったのか。しかもご丁寧に布団まで敷いて。これで忘れていることを期待するなど、IQが低下したとしか思えない。恋愛脳に目覚めた風太郎の完全敗北である。


(いっそ、このまま……いやいや、ダメだ!!あまりにも場所が悪すぎる!)


   まだ慌てるような時間ではないと、なんとか風太郎は心を落ち着かせようとする。こういう時こそ冷静にならなければいけない。風太郎が思うに、一花の次なる一手は先ほどと同じだ。間違いなく一花は流星群のごとく、たくさんの大胆な言葉を風太郎に降り注いでくるであろう。生半可な精神では一花の甘言に乗せられて朝チュンルートへ突入してしまう。まだ日が沈んですらいないのだから、何時間耐久なのか想像がつかない。少なくとも体力が保つわけがないのは明らかだ。無尽蔵と言っていい一花のスタミナに、ついていける気はしない。彼女の興奮を、どうにか冷まさなければならない。


「待て待て待て。お前は女優なんだし、そんな節操なくすることはできねぇよ」

「えっ、そんな……女をここまでその気にさせておいて、お預けだなんて……ひどいよ、フータロー君。これもまた、私たちの青春の一ページなのに……」

「そんな爛れた青春は勘弁してくれ……」

「そもそもさ、いつもフータロー君が寝てる布団で、こうして一緒の時間を過ごすだなんて……そんなの、夫婦以外の何者でもないよ。誰がどう見ても結婚初夜だよ。……ねぇ、あなた?」

「話が跳躍しすぎだ!  そしてさりげなく呼び方変えんな!  めっちゃむずがゆいんだが!」


   女優としての表情の作り方や声のトーンなどをフル活用し、風太郎を陥落させようとする一花。口調こそ普段通りなのに色気を感じてしまい、風太郎も身体が熱くなる。

   しかし、鋼の意志で風太郎は誘惑を断ち切る。いかんせん場所が場所なのだ。らいはも父親もいつ帰ってくるかわからない。何事にも、越えてはいけないラインというものは存在する。だが、今の一花にはそんな正論など通じない。


「ダーリンの方がよかった?  それとも旦那様とか?私はどれでもいいよー♪」

「頼むからいつも通りにしてくれ!」

「まあ私もフータロー君呼びの方が安心感あるけど……でも、フータロー君が言ったんだよ?  もう我慢なんてするな、って」

「そっ、それは……」

「私も初めてだけど、フータロー君のこと、絶対に気持ちよくさせてあげるから!  だから、お願い……!」

「〜っ!  ダメだ!  意味合いが違うわ!  欲に忠実になれってわけじゃねぇ!」

「…………」


   内容こそ若干違えど、まるでデジャヴを感じさせる風太郎と一花のテンポの良い夫婦漫才が再び繰り広げられていたが、その着地点は先程とは違う。一花は表情を曇らせて、ポツリと呟く。


「……私、女としての魅力、ないのかな。これでも女優だし、正直、結構スタイルには自信あったんだけど。フータロー君が夢中にならないんじゃ、何の価値もないよ」

「!?  いや、べつにそういうわけじゃ」

「でも、思えば普段からみんなのも見慣れてるわけだし、当然だよね……調子乗って、ごめんね」

「待ってくれ、一花。俺の言い分を聞いてくれ」


   落ち込んでいる一花を見て、風太郎は慌てて弁明を行う。彼氏として、男として、一花の気持ちに答えてあげたい気持ちはある。自分の考えの甘さなど風太郎は百も承知だが、理由なしに彼女を拒絶しているわけではない。


「いいよ、そんな無理しないで。私、本当に馬鹿だ。あんなことしておきながらまたすぐに駄々こねて、フータロー君の優しさに甘えて、困らせて……!」

「違うんだ、お前に女としての魅力がないだなんて、そんなことない。甘えてくることに、抵抗なんざ感じるわけがない。ただ、俺は……」

「……俺は?」

「……一花が、とっても、大切なんだよ……もう、らいはと同じか、それ以上にな」


   弱々しい言い方になってしまったが、決して風太郎は目は逸らさない。やはり一花は、未だに罪悪感を拭えていないのだろう。もう、一花に自分を傷つけるような真似はしてほしくないのだ。


「勉強ばかりで家族以外の人間関係を断ち切っていた無愛想な俺を、お前は最初から友達だと思って親しげに接してくれた。俺には、そんな存在なんて必要ないと思っていたのに」


   孤独を貫いていたあの日々に後悔はない。最終的にはこうして、一花と共にいる時間があるのだから。だけど。


「でも、お前は俺を最初から必要な存在と思って支えてくれて、ずっと愛を与えてくれたことに気づいて……好きになった。そして、思ったんだ。俺も、この世でただ一人、一花だけには甘えてもいいんじゃないかって」


   風太郎が不必要だと決めつけて、切り捨てた時間は人生の約三分の一に相当する。だから、これからは一花との時間を大切にしたい。今まで走り続けていた分、少しずつ、ゆっくりと。関係の進展を急がなくても、風太郎と一花が恋人なのは絶対に変わらない。身体の繋がりがなければ恋人ではないだなんて、そんなことはないはずだ。


「だからこそ、ここでするわけにはいかないんだ。俺の勝手なのはわかってる。だけど、こんな気持ち、初めてで。本当に、一花の存在が、俺の中でとっても大きくなってるってことを、今日一日でこれでもかってほどに思い知らされた。そんな大切なお前の女優としての輝かしい未来を、欲に任せて奪うわけには───一花?」


   気づけば顔を真っ赤に上気させた一花が、風太郎の両頬に手を添えている。優しくも強い愛を秘めているその瞳に、風太郎は吸い込まれそうになる。


「フータローくん♡」

「なっ、なんだよ……」

「フータローくんっ♡♡♡」

「〜っ!  だから、なんだ───」

 

 

 


「だいすき」

 

 

 


「ちょっ、一花───」

「んっ♡」

 

 

 

 

「むぐっ……!」


   驚いて目を見開いた風太郎が一花の視界に映ったのは一瞬だけだ。一花自身、しっかりと胸に刻んだつもりなのだ。この先何があろうと、たとえこの命に変えてでも。風太郎にだけは絶対、嘘はつかないと心に誓った。

   だがしかし、それはそれ、これはこれ。何事にも例外というものが存在する。三玖に変装した時といい、自分はどうにも歯止めの効かない性格なのだなと、一花は今更ながらに思う。風太郎に重い女だとは思われたくないし、彼に迷惑をかけるようなことはしたくない。それでも、一花がこの状況で我慢できるわけがなかった。


(私たち、キスしてる……夢なんかじゃ、ない……!)


   姉であるがゆえに、ずっと諦めるしかないと思っていた恋。両思いになれても、自分が馬鹿なせいで離れなくてはならないと思いこんでいた存在。だが、そんな少女の想いは報われた。先生と生徒ではなく、念願の彼氏彼女の恋人関係に昇格できた。それだけで幸せなのに、一花の幸福はまだ終わらない。


(優しくてカッコいい、私のたったひとりの王子様……こんな姿見せるの、フータロー君だけなの……♡)


   大好きな彼氏である風太郎が、至近距離で正面から愛を伝えてくれたのだ。愛されているという実感は、一花の想いを加速させる。こんなの、恋する乙女なら誰だって抗えない。ただでさえ風太郎にメロメロだというのに、これ以上優しくして愛をくれるだなんて、一体どうしたいのだろうか。

   本日三回目のキス。だが、今回のそれは唇を重ねるだけの優しいものではない。


「んっ……」


   粘膜接触だけにとどまらず、唾液の交換を伴うディープキス。一花は積極的に舌を絡ませて風太郎の口内を蹂躙する。

   風太郎と触れ合えることに勝る喜びなど今の一花にはない。二人だけの空間に、舌が絡みあう音が響く。炎が心の奥で燃え盛る。それでも、まだ足りない。


「くちゅっ……じゅるっ……」


   絡ませるだけでは満足できず、一花は風太郎の舌を吸う。風太郎の口内の唾液を搾取し、自分の喉の奥に流し込む。身体中が、風太郎で満たされていくのを感じる。もっともっと、ひとつになりたい。しかし、キスはあくまで通過点なのだ。キスだけでこれなら、その先は───


(フータローくん、すき、だいすき……もっと、もっと……!)


   思い立ったら一直線だ。もう二乃をどうこう言える立場ではない。一花自身、すでに自分が愛の暴走機関車になっているのだと確信した。


「ぷはっ……」


   名残惜しくはあるがゆっくりと唇を離す。二人の舌を繋ぐ糸は、一花と風太郎が絡み合った証だ。一花の興奮は高まるばかりである。もっともっと自分の身体を、風太郎で満たしたい。


「フータロー、くん……♡」


   一花は顔を抑えていた手を離し、風太郎の右手を掴む。そして、そのまま自分の左胸に彼の手を引き寄せて、押し当てた。


「いっ、一花……!?」

「どう、かな?  私の胸……ドキドキしてるの、伝わる?」


   湧き上がる幸福感とともに、またひとつ一花の身体は風太郎色に染まる。だが、触れられているだけでは刺激も快感も足りない。一花は風太郎の手の上から自分の手を動かし、自分の胸を揉ませる。


「んあっ……フータローくん、もっとぉ……♡」


   一花の豊満な胸が、風太郎の大きな手の指の感触に包まれる。歓喜で心が震え上がる。大好きな風太郎に触れられていることが、たまらなく嬉しい。それでも、わがままな一花は自分が彼に染まるだけでは満足できない。

 だからこそ、少女は乱れる。脳には、愛の嬌声を。指には、極上の感触を。中野一花という少女の全てを、上杉風太郎の脳に刻み込ませたい。服の上からでこれなのだ。直接触れられたら、どうなってしまうのか。

 もはやオーバーヒート寸前の心と体。静める方法は、ただひとつである。


「ダメ、フータローくん……私、もう、我慢できない……♡」


   愛して、ほしい。求めて、ほしい。


「お願い、私のはじめて、あげるから……フータローくんのはじめても、ちょうだい……♡」


   もっと風太郎に、必要とされたい。はしたないと思われようが、そんなことは関係ない。一花は自分の欲を抑えられない。姉でない自分は、相変わらず自分勝手だ。せめて、風太郎を喜ばせてあげたい。今の自分を見て、彼は興奮してくれているのだろうか。そんな一花の疑問は、すぐに解決した。


「……本当に、いいんだな」


   風太郎に覆いかぶさられて、一花の視界は反転する。言葉こそ単調でも、風太郎の優しさが篭っていることは明白だ。彼の全てが愛おしい。このまま溶けて混ざり合いたい。風太郎に溺れても、後悔なんて絶対にない。


「うん、好きにして、いいよ……一緒に、気持ちよく、なろ?」


   風太郎に求められて、恍惚な笑みを浮かべる一花。この状況での二人の関係は生徒でも友達にも当てはまらない。この部屋にいるのは互いに愛を与え求め合う、男と女の二人だけだ。

   一花は制服に手を掛ける。ワイシャツのボタンがひとつ外れるごとに、一花の素肌は露わになる。羞恥心なんぞかけらもない。愛する風太郎に処女を捧げられる幸せが、今の一花の全てなのだ。あぁ、やっと。大好きな彼と、繋がれる───

 

 

 


   と、その時。

   ピーンポーンという、あまりにもこの空間の雰囲気に場違いな気の抜けた音が、部屋の中に響いた。

 

 

 


「!?」

「っ!  だ、誰だ……?」


   頭が真っ白になった。別に何も難しいことなどなにもない。上杉家に訪れようとした来客が、チャイムを鳴らした。ただそれだけのことだ。

   火照っている身体に反して頭は急激に冷めていくのを感じる。文字通り水を差す行為だ。この状況で続けることは叶わないだろう。


(誰なの、これからって時に……!  私とフータロー君の邪魔、しないでよ……!)


   お預けを食らった一花は八つ当たりだとわかっていても不満を隠すことができず、玄関の方を睨みつける。せっかく、いいところだったのに。恋人同士が愛し合いひとつになろうという時に横槍を入れた不届き者に、強い敵意を覚えるも───

 

 

 

 

 


「上杉君?  五月です。お見舞いに来たのですが、体調は大丈夫ですか?」